根
提供: 新纂浄土宗大辞典
こん/根
力があり、強い作用を持つもの。物事の根源。能力。①Ⓢindriyaの訳語。五根や六根がある。『俱舎論』では「根とは是れ何の義なるや。最勝なる自在の光顕なるを根と名く」(正蔵二九・一三中)といい、根とは力の優れたものとする。この根には眼・耳・鼻・舌・身の五根、女・男・命・意の四根、憂・喜・苦・楽・捨の五受根、信・勤・念・定・慧・未知根・已知根・具知根の八根、以上の二二が挙げられる。②Ⓢmūlaの訳語。三善根や三不善根がある。この場合の根とは、植物の根を意味する語で、同時に根本や根源を意味する。無貪・無瞋・無痴の三善根、貪・瞋・痴の三不善根は共に善心・不善心の源となるものであるため、根といわれる。③機根や根性のことで、教えを受ける者の資質や性質をあらわす。利根・鈍根の二根や上・中・下の三根などがある。このように分類される資質としての根は、生まれつき具えるものであるが絶対的なものではなく、鈍根の者が利根になることもある。このように機根が変化することを転根あるいは練根という。
【資料】『俱舎論』
【執筆者:石田一裕】