弥勒信仰
提供: 新纂浄土宗大辞典
みろくしんこう/弥勒信仰
弥勒仏や弥勒菩薩への信仰。弥勒(ⓈMaitreyaⓅMetteyya)は、釈尊に次いで仏になると約束された菩薩で、五六億七千万年後にこの世に現れて衆生を救済する未来仏。弥勒信仰は、インドのベナレスに起源を持つとされ、中国・朝鮮を経て日本に伝播した。日本での弥勒信仰は、上生信仰と下生信仰が見られた。奈良時代には貴族社会を中心に弥勒菩薩が住する浄土すなわち兜率天に往生する上生信仰が盛んとなり、平安時代には末法思想の影響を受けて弥勒仏が現世に現れる下生信仰が主流となった。弥勒信仰は民間にも流入して、中世には私年号に用いられた事例があり、近世には民衆の救済と世直し運動が結び付いた。富士講の指導者である食行身禄は、弥勒の世の到来を告げて、富士山で入定した。弥勒信仰は各地の民俗芸能にも影響を与え、茨城県鹿島地方の鹿島踊り、沖縄県八重山地方のミルク行列などが見られる。
【参考】宮田登『ミロク信仰の研究 新訂版』(未来社、一九七五)、同編『弥勒信仰』(『民衆宗教史叢書』八、雄山閣出版、一九八四)、松本文三郎『弥勒浄土論・極楽浄土論』(『東洋文庫』七四七、平凡社、二〇〇六)
【参照項目】➡弥勒一
【執筆者:大澤広嗣】