てんぐぞうし/天狗草紙
全七巻。鎌倉末期の宗門を批判・風刺した絵巻。東京国立博物館などに分蔵。南都北嶺の教団が伝統を後ろ盾に驕慢にほこるさま、また浄土・禅など新興教団が独善に走る様相を「天狗の七類」にたとえて風刺するという、宗教絵巻としては極めて特殊な内容を持っており、叡山の学僧による執筆と想定される作品である。詞書中に永仁四年(一二九六)の制作年が記され、絵画史上の貴重な基準作例である。なお異本として「魔仏一如絵巻」、「是害房絵」(国重要文化財)などがある。【図版】巻末付録
【執筆者:多川文彦】