壺月全集
提供: 新纂浄土宗大辞典
こげつぜんしゅう/壺月全集
全二巻。渡辺海旭の遺文集で、門下や友人の組織する壺月全集刊行会が出版したもの。上巻は昭和八年(一九三三)五月一日発行で、著述と研究論叢四六篇、付録の欧文著書論文目録からなる。下巻は同年一二月二三日の発行で、講説論策、警世時言、感懐随筆、詩藻文範、牘箋消息からなり、付録に略歴、素描集、年譜、諸家哀悼文などが収録されている。上巻に収められた『欧米の仏教』はその後の出版物のモデルになっており、また諸論文は、海旭が梵蔵巴の各言語を駆使しただけでなく、インドの周辺言語研究を発展させる内容のもので、とくにチベット仏教と密教研究をすすめた先駆的論考である。さらに改訂版には欧文著書論文集が追加され、その目次に示された著書論文一一点のうち九点が新たに加えられたもので、梵文普賢行願讃の研究、カルマーサパーダ王の物語に関する論文などは貴重である。下巻は『労働共済』誌に発表された講説などがかなり欠落しているのが惜しまれる。なお、昭和五二年(一九七七)七月、大東出版社より改訂版の上・下巻が刊行された。
【参考】芹川博通『渡辺海旭研究』(大東出版社、一九七八)、同『仏教と福祉』(『芹川博通著作集』七、北樹出版、二〇〇八)
【参照項目】➡渡辺海旭
【執筆者:芹川博通】