埋葬
提供: 新纂浄土宗大辞典
まいそう/埋葬
遺体、遺骨を土中に埋めること。ただし、必ずしも土中とは限らず地下室や地上の施設の場合もある。土葬ではほぼそのまま遺体が埋葬されるが、火葬の場合は、遺体を荼毘に付した後、遺骨を埋める。埋葬の歴史は非常に古く、約一〇万年前のネアンデルタール人の例がよく知られている。それより時代は下るが、アフリカや西アジアにおけるホモ・サピエンスも同様に埋葬を行っていたとされる。日本においては北海道美利河遺跡や湯の里遺跡に埋葬の可能性がある旧石器時代の遺構が発見されているが、縄文時代には土器棺墓や石棺墓が制作されるなど確実に埋葬を行った証拠が見つかっている。埋葬は極めて文化的な行為といえ、一部の類人猿に同類の行為が見られるという説があるものの、現段階では人間特有の行為と理解されている。埋葬を行うためには死という観念を持たねばならないからである。死後の世界や霊魂といった抽象観念を持つとともに、死者に対する不安や恐怖、敬意、敬慕など様々な感情を抱くことが多様な埋葬文化を生み出していった。
【参考】藤井正雄『仏教民俗学大系 四 祖先祭祀と葬墓』(名著出版、一九八八)、山折哲雄『死の民俗学—日本人の死生観と葬送儀礼—』(岩波書店、二〇〇五)
【執筆者:江島尚俊】