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十一面観音

提供: 新纂浄土宗大辞典

じゅういちめんかんのん/十一面観音

十一の顔を持った観音菩薩で、変化観音の一つであり、六観音の一つとされる。大光普照観音ともいう。Ⓢekādaśamukhaの訳。救済者としての観音菩薩の持つさまざまな能力を十一面という多くの顔によって表したもの。十一の顔のうち、正面の三つは菩薩面、または慈悲面、左面の三つは瞋怒しんぬ面、右面の三つは狗牙上出くげじょうしゅつ面、背後の一つは大笑面、頂上の一つは仏面を表している。人間の喜怒哀楽を表現したものといわれる。十一面二臂または四臂をもつ。正面の顔を含めて十一面とするものと、正面の顔以外に十一面あるものがある。耶舎崛多訳『仏説十一面観世音神呪経』に「我に心呪有り十一面と名づく。此の心呪は十一億の諸仏の所説なり。我れ今之を説かん。一切の衆生の為の故に。一切の衆生をして善法を念ぜしめんと欲するが故に。一切の衆生をして憂悩なからしめんと欲するが故に。一切の衆生の病を除かんと欲するが故に。一切の障難災怪悪夢を除滅せんと欲するが故に。一切の横病死を除かんと欲するが故に。一切の諸の悪心者を除きて調柔ならしめんと欲するが故に。一切の諸魔鬼神の障難を除きて起こらざらしめんと欲するが故なり」(正蔵二〇・一四九上)とあることを由来とする。玄奘訳『十一面神呪心経』では、右手を下に垂らして数珠を持ち、左手に紅蓮を挿した花瓶を持つとある(正蔵二〇・一五四上)。中国や日本において広く信仰され、盛んに造像された。奈良の聖林寺や京都の観音寺のほか、奈良の法華寺や唐招提寺、滋賀県の渡岸寺どうがんじ、宇治平等院などの像が有名。【図版】巻末付録


【参照項目】➡観音菩薩六観音


【執筆者:吉澤秀知】