勝易念仏
提供: 新纂浄土宗大辞典
しょういねんぶつ/勝易念仏
極楽浄土への往生を目指すに際し、阿弥陀仏が本願として選択した称名念仏は他の諸行に比してもっとも勝れた功徳を具えており、かつ、願往生人にとってもっとも修し易いということ。『選択集』三において法然は、阿弥陀仏が称名念仏を本願に選取し、その他の諸行を選捨した理由について「聖意測り難し、輙く解すること能わず。然りといえども、今試みに二義を以てこれを解せば、一には勝劣の義、二には難易の義なり。初めに勝劣とは念仏はこれ勝、余行はこれ劣なり…次に難易の義とは念仏は修し易く、諸行は修し難し」(聖典三・一一八/昭法全三一九)と説示し、その中で阿弥陀仏が念仏を称えた者に直接本願力を及ぼすためその功徳は諸行に勝れ、また、阿弥陀仏がすべての人々を救おうという思いのもとに本願として選定した称名念仏であるため諸行に比してもっとも修し易いことを明らかにしている。法然による創唱とはいえ、勝易念仏たらしめる主格は我々凡夫ではなく、阿弥陀仏であるという点が肝要である。なお、厳密な意味では勝易念仏と勝劣の義・難易の義は全同とは言い得ない。
【参考】林田康順「法然上人〈選択思想〉と〈勝劣難易二義〉の位置」(『仏教論叢』四三、一九九九)
【執筆者:林田康順】