沙門
提供: 新纂浄土宗大辞典
しゃもん/沙門
ⓈśramaṇaⓅsamaṇaを音写したもので、出家修行者のことであるが、これは努める、励む(Ⓢ√śram)という動詞に由来する語であるため、本来は「努め励む人」を意味する。息心・勤息・勤労・静志などと漢訳されることもある。釈尊在世当時、それまでのインドの正統宗教であったバラモン教の伝統に従わない自由思想家が出現し、新しい思想を展開した。彼らは沙門と呼ばれ、中インドで勢力のあった六師外道もこのタイプの宗教者である。仏教の出家修行者も沙門と呼ばれ、反バラモン教の宗教者として活躍した。このように、バラモン教の聖典ヴェーダを信奉する宗教者である婆羅門と、ヴェーダの権威を否定する宗教者の沙門とで、当時のインドの宗教者を総括し、経典では「沙門婆羅門」と併称されることがよくある。また「沙門ガウタマ」というように、六師外道など仏教以外の宗教者がブッダを呼ぶ際の呼称として用いられることもある。
【執筆者:平岡聡】