心行前後
提供: 新纂浄土宗大辞典
しんぎょうぜんご/心行前後
安心と起行の前後関係のこと。良忠『疑問抄』下、同『浄土宗要集聴書』、聖聡『銘心抄』上などに説かれる。『疑問抄』では、称名の行者は、善心(妄念や心の乱れを止めた状態)で名号を唱える(起行)べきか、反対に名号を唱えることで善心に住すべきかというように、心と行について、その起こす前後をどのように理解するのかを問い、法然の「名号を唱えれば、名号の徳によって自ずと妄念が止まり、願心が生じる、本願の願意を信じ一向に名号を唱えよ」という教えを示し、また、明遍・良遍も同じ理解であるとして、凡夫(下機)は心の状態にかかわらず、称名行で往生することを疑わずに名号を称えるべき旨を述べる(聖典五・三四七/浄全一〇・四九)。また『浄土宗要集聴書』では「一期相続の行者、心行の前後、時に随て不定なり」(浄全一〇・二五七)とあるように、心と行はいずれが前後であるかは定まっていないとする。『銘心抄』では、心行の前後は不定であることをふまえた上で「ある時は、また心行俱起なるべし」(聖典五・三八五/浄全一〇・六四)との解釈を示す。
【執筆者:米澤実江子】