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一言芳談

提供: 新纂浄土宗大辞典

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いちごんほうだん/一言芳談

二巻、もしくは一巻。『一言芳談抄』ともいう。編者、成立年次とも不詳。成立年次は良忠門弟慈心法語が記載されているため、慈心の没年永仁五年(一二九七)から、引用の見られる『徒然草』の成立年時(一三三〇—三一)までの成立か。編者は高野山に関係の深い頓阿であるとの指摘や、良忠かその門下に師事した者ではないかとの説がある。法然とその門弟を中心に、四五人の短編の法語を一五三にわたって収録した要文集。その法語のほとんどは法然聖光門弟らで、証空隆寛幸西親鸞は見られない。他には行基最澄源信重源貞慶といった僧や、薗田太郎智明、熊谷直実といった人物も取り上げられている。それぞれの法語出所しゅっしょの判明しないものもあり、編者による作文の可能性が考えられ、また現在は散逸してしまっている文献からの引用も少なからず含まれている。内容は限られたテーマに絞られたものではなく多岐にわたり、後に成立した『標註一言芳談抄』ではその内容を三資、清素、師友、無常、念死、臨終、念仏安心、学問、用心に分類して並べ替えられている。現存する最古のものは慶安元年(一六四八)に刊行された二巻本の版本のみで、それ以前の写本などは伝わっていない。また、この他に大正一二~一五年刊行『続群書類従』(二八輯下)には一巻本が収録されており、慶安版とは異本とされているなど、成立当時の形態がどの様な形であったかは、はっきりしていない。題名も慶安版本には上下二巻共に首題に「一言芳談抄」、尾題に「一言芳談」とあり、両者が用いられている。後に注釈を施した『一言芳談句解』四巻(元師撰)が貞享五年(一六八八)に、『標註一言芳談抄』三巻(湛澄撰)が元禄二年(一六八九)に刊行されている。


【所収】『浄土仏教古典叢書』、『続群書類従』二八下


【参考】丸山博正「『一言芳談』考」(櫛田博士頌寿記念『高僧伝の研究』山喜房仏書林、一九七三)、八田裕子「『一言芳談』諸本対校表」(『文芸論叢』五四、二〇〇〇)、岩波文庫『標註一言芳談抄』解説(岩波書店、一九四一)


【参照項目】➡標註一言芳談抄祖師一口法語


【執筆者:郡嶋昭示】