一巻。聖冏述。成立は応永六年(一三九九)。三心を具しても、往生できない場合があるという心具不生義を聖冏が論駁ろんばくした書で、書名となった涇渭分流とは、涇水(濁)と渭水(清)、すなわち正流と邪流とを分別するという意味。心具不生義は、良忠門下の道光や尊観の弟子である慈観が主張し、かつて聖冏は、明徳二年(一三九一)に『心具決定往生義』を著し反論を試みた。本書では、信州善光寺南大門に住んだ名越派二祖良慶の説を取り上げ、批判を加えている。
【所収】浄全一二
【参照項目】➡心具決定往生義
【執筆者:東海林良昌】