棺
提供: 新纂浄土宗大辞典
かん/棺
遺体を納めて葬る入れ物。「ひつぎ」と読む場合もあり、特に遺体が納められている棺を柩と書き表すこともある。棺は遺体を納めて他者の目に直接ふれないようにするものであり、死者を埋葬または火葬場へ運ぶ運搬具でもある。棺には寝棺(横棺、伸展葬)と坐棺(立棺、屈葬・蹲葬)があり、坐棺の形態は箱型や桶型がある。材質は木棺をはじめ、甕棺、陶棺、石棺、乾漆棺などがある。『四十八巻伝』三八に、「上人(法然)往生のとき、この地に廟堂をたて、石の唐櫃を構えて、納め置き奉る」(聖典六・五九六)とあり、法然の棺は石棺であった。江戸時代は木製の桶型の坐棺が多く、死ぬと急いで作ることから早桶と称した。現在火葬場の普及に伴ってほとんどが寝棺(直方体箱式・平棺)となった。
【参考】佐藤米司『葬送儀礼の民俗』(岩崎美術社、一九七一)、江戸遺跡研究会編『墓と埋葬と江戸時代』(吉川弘文館、二〇〇四)、碑文谷創『葬儀概論』(表現文化社、二〇〇三)
【参照項目】➡納棺
【執筆者:西城宗隆】