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鬼の念仏

提供: 新纂浄土宗大辞典

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おにのねんぶつ/鬼の念仏

大津絵の題材の一つ。角が折れた鬼が僧衣を着て傘を負い、かね撞木しゅもくで打ちつつ、奉加ほうがちょう(寄進帳)を持ち布施を乞いながら歩いている姿を描いたもの。大津絵とは江戸時代初期頃から近江国の大津宿あたりで売られていた民芸的絵画で、初期は仏画を中心としていたが、天和(一六八一—一六八四)頃からは、人気役者の絵や美人画、滑稽画などの世俗画が中心となっていった。鬼の念仏には歌が併せて書かれることも多いが、「真なきすがたばかりは墨染めのこころは鬼にあらわれたり」と歌われるようなその風刺性ゆえに人気を博した。また、鬼の念仏は赤子の夜泣きに効き目があるという民間信仰も生まれた。


【参考】柳宗悦「大津絵」(日本民芸協会編『柳宗悦全集Ⅹ』春秋社、一九五五)、水尾比呂志「大津絵概説」(国華社『国華』一二六七、二〇〇九)


【執筆者:名和清隆】