おにのそらねんぶつ/鬼の空念仏
慈悲のない者がうわべだけ慈悲深く見せたり、殊勝な態度でふるまうこと。「鬼の念仏」ともいう。空念仏は「からねんぶつ」ともいい、信心のないうわべだけの念仏である。容赦なく亡者を責め立てる情け知らずの地獄の鬼が「南無阿弥陀仏」と念仏するわけがない。鬼の称える念仏があるとすれば、それは見せかけであり、まさしく空念仏である。このように、冷酷で慈悲のない人がうわべだけ慈悲深く見せかけること、あるいは柄にもなく殊勝な態度に見せてふるまうことをひやかしていう。「空念仏も三合どまり」といわれるのは、信心のない念仏を称えても三度と続かない、の意味である。
【執筆者:勝崎裕彦】