総依一経別依一句
提供: 新纂浄土宗大辞典
そうえいっきょうべっていっく/総依一経別依一句
浄土宗のよりどころとする経典は「浄土三部経」であり、その中でも『観経』によるが、さらにその経文の中の深心の一句によるという意の聖冏の語。聖光の『西宗要』には、浄土宗を立てる理由を「総じて云う時は、観経一部の文に依り、別して云う時は、三心中深心の文に付きてこれを立つ」(浄全一〇・一三四下)と述べ、『観経』の中でも深心を重視することを明かす。この理由を「善導御意深心の一句に観経一部を収める意なり。深心は文約にして、意広くして、言は微にして、理明らかなり。所謂深心とは信心なり。…これに依って善導和尚も深心の人は、我が所立の一向専修の弥陀の名号、是を信じて疑いを留むる事なく、決定往生せしめんが為に、深心より念仏一宗を釈出したもうなり」(同一三五上)と、善導が総じては『観経』から、別しては深心の一句より、浄土宗を立てたことを述べている。これを受けて聖冏は『教相十八通』上に、「問う。別依一経の時観経の中に於いて、何れの文に依りて浄土宗を立てたまえるや。答う。此れに亦総依一経別依一句という事有り。一句とは二者深心の四字なり」(浄全一二・七三六下)と述べている。
【参考】『浄土宗要集』一(浄全一〇)、『教相十八通』上(浄全一二)
【執筆者:東海林良昌】