アニミズム
提供: 新纂浄土宗大辞典
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アニミズム/animism
イギリスの人類学者、E・B・タイラーが、宗教の起源を論じるなかで提唱した用語。あらゆるものに霊魂の働きを感受する世界観を表す語として広く用いられている。タイラーは、すべての宗教の起源は「霊的存在への信仰」にあるとして、これをラテン語で「気息」「霊魂」を意味するanimaに由来するアニミズムの語で包括した。その後、アニミズムを宗教の起源として直線的な進化図式の冒頭に位置づける彼の仮説は、西洋中心主義的であるとして批判された。ともあれ、山川草木に霊性を感受するあり方がいまも世界各地に息づいている以上、その命名にはなお一定の有効性があるといえる。タイラーの説は、同じくイギリスの人類学者J・G・フレイザーによる樹木崇拝や穀霊の議論に影響を与え、さらに日本民俗学者の柳田国男や折口信夫の稲魂談義にまで波及した。たとえば折口は、大嘗祭・新嘗祭において諸国から奉納される稲穂は神であり国々の魂であると論じ、「稲の魂は、神の考えが生ずる、一時代前の考え方」(折口信夫「大嘗祭の本義」『折口信夫全集』三、中央公論社、一九九五)としており、同型の思考が垣間見える。他にも日本の宗教の基層にアニミズムをみる言説は多いが、そこでしばしば言及されるのが本覚思想である。日本仏教で独自に発展した本覚思想は、あらゆる衆生に悟りの可能性があるとする如来蔵思想を発展させ、草木国土までもがそのままで悟りを開いているという「草木国土悉皆成仏」の思想にいたったが、これはアニミズム的発想が仏教に取りこまれた結果であるという。近年では、自然のなかに自己とのつながりを感じ宇宙との調和や一体感に生きる世界観を目指すニューエイジやスピリチュアリティ文化が、アニミズムを自らのルーツとして称揚することがある。
【参考】岩田慶治『アニミズム時代』(法蔵館、一九九三)
【執筆者:宮坂清】