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往生浄土伝

提供: 新纂浄土宗大辞典

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おうじょうじょうどでん/往生浄土伝

三巻。宋・戒珠かいしゅ撰と伝わる往生伝戒珠撰集とされる往生伝は二種が現存する。一つは真撰の『浄土往生伝』三巻であり、もう一つは後世戒珠に仮託された偽撰『往生浄土伝』三巻である。本書は後者であり、遼の非濁ひじょくによって作られた『随願往生集』から取材したものであろうと塚本善隆によって推定された。現在は名古屋市の真福寺(大須観音)と長福寺七寺ななつでら)に一二世紀の写本が所蔵されている。立伝されている浄土往生者は北魏や劉宋から北宋にいたる一一六人を数え、これが三巻にまとめられている(上巻と中巻にそれぞれ四〇人、下巻に三六人)。また最後に迦才かざい浄土論』および文諗もんしん少康編『瑞応刪伝』に列せられている往生者の名前をあげている。真撰の『浄土往生伝』と違って在家者の伝をも載せており、このため民間での念仏信仰の様態を知ることもできる。金沢文庫所蔵『漢家類聚往生伝』は、この偽撰『往生浄土伝』(真福寺本系)にもとづいて再編成された文献。なお長福寺本は真福寺本から抄出した写本であると考えられる。何を基準に抄出したのかは不明であり、その立伝の順序は真福寺本と同じであるが、約半数の六一人(上巻一九人、中巻一八人、下巻二四人)が立伝されている。


【参考】塚本善隆「日本に遺存せる遼文学と其の影響」(『日支仏教交渉史研究』弘文堂書房、一九四四/『塚本善隆著作集』六、大東出版社、一九七四)、清水宥聖「偽撰『戒珠集』とその影響」(大正大学国文学会編『文学と仏教 第一集 迷いと悟り』教育出版センター、一九八〇)、大谷旭雄「戒珠集『往生浄土伝』と法然」(正大紀要七八、一九九三)、湯谷祐三「七寺本『往生浄土伝』とその周辺」(『七寺古逸経典研究叢書』五、大東出版社、二〇〇〇)、国文学研究資料館編『伝記験記集』(『真福寺善本叢刊』六、臨川書店、二〇〇四)


【参照項目】➡戒珠浄土往生伝


【執筆者:齊藤隆信】