柄香炉
提供: 新纂浄土宗大辞典
えごうろ/柄香炉
供養具の一つ。香炉に長い柄がついたもの。手に持って焼香を供養することから手炉ともいわれる。浄土宗では導師が用いる具として常用される。「香偈」や「送仏偈」などでは執炉長跪し、香炉を前方に捧持して、焼香供養に用いられる。柄の末端の形状や、そこに据えられる鎮子(柄を持ったときのバランスを保つための重し)の種類によって鵲尾形(鵲の尾の形)・獅子鎮・瓶鎮・蓮華形(火炉を蓮華に、柄を蓮茎に見立てた)の四種の形に分けられる。種々の経典に「手に香炉を執り焼香供養する」(『仏説毘奈耶経』正蔵一八・七七四上、『仏説陀羅尼集経』正蔵一八・七八八下など)とあり、次第に用いられるようになって、日本では『日本書紀』の皇極天皇元年(六四二)七月二七日の条に「手に香鈩を執りて香を焼き、願を発す」とあるのが初例といえる。奈良法隆寺夢殿にある玉虫厨子(七世紀)には左右に柄香炉を持ち供養する僧が描かれている。聖徳太子像にこれを持つ像が多いことから太子形柄香炉ということがある。
【資料】『唐招提寺戒壇別受戒式』(正蔵七四・三九下)、『律宗行事目心鈔』([1]
【参照項目】➡香炉
【執筆者:大澤亮我】