法然聖人御夢想記
提供: 新纂浄土宗大辞典
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ほうねんしょうにんごむそうき/法然聖人御夢想記
法然が夢の中で善導と対面し、善導から専修念仏を弘めたことを称讃されるという宗教体験を記す。『西方指南抄』中巻本に収録され、「善導御事」の添書がある。紫雲の中から墨染の衣を着た僧が法然のもとに飛び下ったので、その僧を仰ぎ見れば、上半身は肉身すなわち僧形で、下半身は仏身のごとく金色であった。法然が誰人かと問うと、「われはこれ善導なり」と答え、何のために来られたかと問うと、「汝不肖なりといえども、よく専修念仏のことを言う。はなはだもって貴しとする」と答えた。さらに専修念仏の人はすべて往生するのかと問うたが、その答えを得ない間に突然夢が覚めたという。この法然の宗教体験は「二祖対面」と称され、文章の長短の違いはあるものの諸法然伝に見られ、とくに『四十八巻伝』七の内容と本遺文とがほぼ一致する。また、本遺文と同内容の漢文体のものが、大徳寺本『拾遺漢語灯録』に『御夢記』と題し収録される。『御夢記』には「善導御事」の添書はなく、「建久九年五月二日註之 源空」の日付と署名を記すなどの違いはあるが、本遺文が『西方指南抄』の中で、「建久九年正月一日記(三昧発得記)」に続けて収録され、『御夢記』も「三昧発得記」の付けたりとして大徳寺本『拾遺漢語灯録』に収録されていることから、同一原本の系統から転写された可能性が考えられる。
【所収】昭法全、『親鸞聖人真蹟集成』五、真聖全四、『定本親鸞聖人全集』五
【参考】梶村昇・曽田俊弘「新出『大徳寺本 拾遺漢語灯録』について」(『浄土宗学研究』二二、一九九五)、中野正明「『法然聖人御夢想記』について」「補論 大徳寺本『拾遺漢語灯録』について」(『増補改訂法然遺文の基礎的研究』法蔵館、二〇一〇)
【参照項目】➡二祖対面、西方指南抄、拾遺黒谷上人語灯録、夢記一
【執筆者:山本博子】