念仏得失義
提供: 新纂浄土宗大辞典
ねんぶつとくしつぎ/念仏得失義
一巻。法然の撰と伝えられる一方、偽撰説もある。『拾遺和語灯録』跋文には、本書の題名をあげ、それが法然のものではないことを指摘する。また、文雄『蓮門類聚経籍録』下には、「念仏往生得失義一巻 高野山明遍」(仏全一・四一九下)とあり、これが本書を指すならば、やはり法然偽撰説を示していることになる。さらに、憲栄『蔵外法要菽麦私記』には、本書の題名を出し、それを鎮西家の書とする(真宗全書七四・六二~三)。内容は、念仏往生について、四つの不定と四つの決定の義があると提起する。四つの不定とは、①自力念仏往生不定、②仮名念仏往生不定、③悪見念仏往生不定、④慢心念仏往生不定で、これらの不定について、自力を他力に、仮名を真実に、悪見を正見に、慢心を直心に、それぞれひるがえすよう勧め、四つの観点からの決定往生を説く。
【所収】昭法全
【執筆者:角野玄樹】