一巻。伝法然著。『昭法全』では、「伝法然書篇」に分類しており、真偽未詳と位置づけている。おそらく文調や流伝状況を考慮してのことであろう。したがって末尾に、建久五年(一一九四)の記述があるが、歴史的事実かどうかは不明である。内容は、劣った機根の者には念仏の教えがあることを説く。今世の我々は、六道四生を家とし、本心を失う者であり、そうした人々に対し、浄土門の念仏の教えを勧め、様々な聖教も、浄土へ往生することを勧めていると強調する。そして、往生できるか否かは、信・不信にかかっているとし、臨終まで信心を動かしてはならないと説く。
【所収】昭法全
【執筆者:角野玄樹】