涅槃分
提供: 新纂浄土宗大辞典
2018年3月30日 (金) 06:31時点における192.168.11.48 (トーク)による版
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ねはんぶん/涅槃分
阿弥陀仏の浄土に往生したものが、彼の土において得る位のことで、涅槃の可能性が得られたことをいう。曇鸞『往生論註』下の清浄功徳成就釈に「凡夫の人、煩悩成就することあれども、また彼の浄土に生ずることを得れば、三界の繫業畢竟じて牽かず、則ち是れ煩悩を断ぜずして涅槃の分を得」(浄全一・二四一上)とある。煩悩具足の凡夫が阿弥陀仏の浄土へ往生することにより、往生以前に煩悩を断たなかったにもかかわらず、阿弥陀仏の大願業力によって涅槃分を得ることができる。しかもそれは、三界において重ねた罪業の軽重に関わりなく得られるものとされる。良忠『往生論註記』四には「凡夫の人、仏願力に託して往生を得るとき煩悩を断ぜず。断惑せざるが故に煩悩成就す。惑成就すといえども現起せず。現起せざるが故に穢土に還らざる」(浄全一・三一七下)とある。煩悩成就の凡夫が往生したのち、その煩悩が再び生起することがないため、浄土にとどまるとされる。
【資料】『往生論註記』四、『往生論註略鈔』下
【執筆者:石川琢道】