南米開教区
提供: 新纂浄土宗大辞典
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なんべいかいきょうく/南米開教区
ブラジルの開教は、昭和二九年(一九五四)一一月に特命開教使の長谷川良信によってサンパウロ市で始められた。長谷川は「宗教、教育、福祉の三者一体」の開教理念に基づいた開教活動を展開し、とくに福祉事業はブラジル開教の大きな特色をなしている。長谷川は、後任を他の開教使に任せて一旦帰国した後、二度目の渡伯に当たる同三二年に南米浄土宗別院日伯寺および日伯寺学園(日本語学校)を開設するとともに、翌年には現在の「こどものその」の前身となる知的障害児施設を設置し、ブラジルにおける教育、福祉活動を開教活動の一環とした。同四九年一月には、長谷川の後任である第二代開教総監佐々木陽明によって、パラナ州にマリンガ日伯寺が開設された。同五〇年三月には、寺の付帯事業として「パラナ老人福祉和順会」を組織し、同五一年には、経済的に困窮している日系ブラジル人のための養老施設「和順ホーム」を建設し、初代総監長谷川の開教理念を継いで、社会福祉活動等にも力を入れている。続いて平成九年(一九九七)には、南米開教区第三番目の寺として、イビウーナ日伯寺が開設された。この寺は、サンパウロの西南西約七〇キロに位置するイビウーナ市の郊外、モルンドゥ区の標高千二百メートルの丘陵地で農園を経営していた檀信徒の村上正朋から、一四ヘクタールの土地寄贈をうけ、寄贈の地にあった旧村上邸を仮本堂として開基されたものである。同一六年には南米開教五〇周年記念事業として、鉄筋コンクリート瓦葺きの本堂・事務所・納骨施設を備えた開山堂(寺院様式)と別棟の教化ホールが建立されている。さらに、同二〇年には、南米開教区第四番目の寺として、パラナ州の州都クリチバにクリチバ日伯寺が開基された。現在は、一般家屋を借家しての布教所であるが、この地を拠点とした今後の教線拡大が期待されている。
【参考】『浄土宗海外開教のあゆみ』(浄土宗開教振興協会、一九九〇)
【執筆者:水谷浩志】