中道
提供: 新纂浄土宗大辞典
ちゅうどう/中道
相互に矛盾し対立する二つの事柄から離れること。極端な立場を離れたかたよりのない中正の道のこと。たとえば断と常の二見、あるいは有と無の二辺を離れたとらわれのないあり方のことである。初期仏教で四諦・八正道・十二因縁の理法が説かれ、これを正しく観察することが中道の正見であるという。苦行と快楽の両極端をきびしく排斥し、不苦不楽の中道のあり方を八正道の実践によって示している。偏見と執着を離れた中道こそ仏教の根本的立場である。龍樹は『中論』に、「衆因縁生法、我れ即ち是れ無と説く、亦た是れ仮名と為す、亦た是れ中道の義なり」(正蔵三〇・三三中)と説いて、縁起・無自性・空の同列に中道の実践理論を置いた。天台においては、空仮中の三諦観の教義を完成し、中道第一義・中道妙観の教えに到達する。聖冏は『糅鈔』三六で、日想観を説明して、一心三観を行じて、中道第一義諦観に入るべき教説を説示している。
【執筆者:勝崎裕彦】