悪を造っても往生の障りとはならないから、悪業を控える必要はないとする考え方。悪無過、悪無礙と同義。浄土教を曲解したもので大きな誤り。とくに一念義と密接に関連し、法然存命当時から見られた。そのような考え方に対して、法然は『七箇条制誡』において厳しく戒めている。また、この考え方は親鸞門下の中、関東地方の一部で流行したとみられている。近年、悪人正機説研究により注目される。
【資料】『七箇条制誡』、『親鸞聖人御消息集』(『定本親鸞聖人全集』三)
【参考】松本史朗『法然親鸞思想論』(大蔵出版、二〇〇一)
【参照項目】➡一念義、悪人正機
【執筆者:工藤大樹】