西方指南抄
提供: 新纂浄土宗大辞典
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さいほうしなんしょう/西方指南抄
六巻。編者・成立年代不明。法然の遺文集。三重県津市高田専修寺に康元元年(一二五六)から翌二年にかけて親鸞自筆になる写本が所蔵される(国宝)。ほかに専修寺には親鸞門下の顕智による書写本が所蔵される。現存する写本は上巻本、上巻末、中巻本、中巻末、下巻本、下巻末の六冊からなる。上巻本には「法然聖人御説法事」、上巻末には「法然聖人御説法事」「公胤夢告」の二篇、中巻本には「建久九年正月一日記」「法然聖人御夢想記」「法語十八条」「法然聖人臨終行儀」「聖人御事諸人夢記」の五篇、中巻末には「七箇条制誡」「起請没後二箇条事」「源空聖人私日記」「決定往生三機行相」「鎌倉の二品比丘尼への御返事」「名号の勝徳と本願の体用」の六篇、下巻本には「念仏の事御返事」「おほごの太郎宛御返事」「しやう如ぼう宛御消息」「故聖人の御坊の御消息」「基親取信信本願之様」「聖人御房の御返事の案」「或人念仏之不審聖人に奉問次第」「浄土宗の大意」の八篇、下巻末には「四種往生事」「法語(末代の衆生を云々)」「法語(末代悪世の衆生の云々)」「九条殿北政所御返事」「九月十六日付御返事」「法語十三問答」「つのとの三朗宛御返事」の七篇など、説法・自記・消息・法語等合わせて二八篇の法然の遺文を所収している。この親鸞自筆本には『黒谷上人語灯録』所収各遺文との比較等から、底本あるいは原形の存在を想定することができ、親鸞が常陸国稲田の弟子たちに師法然の遺文集を送り届けようと真摯に転写したものであるが、一方では親鸞自らが編集したとする説を唱える者も多い。
【所収】『定本親鸞聖人全集』第五巻輯録篇(法蔵館、一九七三)、『親鸞聖人真蹟集成』第五・六巻(同、一九七三)
【参考】赤松俊秀「西方指南抄について」(『仏教史学論集』塚本博士頌寿記念会、一九六一)、平松令三『親鸞聖人真蹟集成』第六巻巻末「解説」(法蔵館、一九七三)、中野正明『増補改訂法然遺文の基礎的研究』第Ⅰ部第二章「『西方指南抄』について」(同、二〇一〇)
【執筆者:中野正明】