二巻。空海著。顕教と密教との浅深優劣を論じて、密教がすぐれていることを明かした書物であり、空海の教判思想を示したものとして『十住心論』とならんで重要な書物である。浄土宗においては、『選択集』一一の中で「弘法大師の『二教論』」(聖典三・一六二)として本書より毘奈耶びなや、陀羅尼等の五種による教判を説いた部分を引用しているが、この部分の全文が『六波羅蜜経』の引用であり、空海独自の思想を説く部分でなく、さらに『選択集』の「廬山寺蔵草稿本」にはこの『二教論』引用の部分の文章が記されていない。
【所収】正蔵七七
【執筆者:兼岩和広】