彼土得生・此土入聖
提供: 新纂浄土宗大辞典
ひどとくしょう・しどにっしょう/彼土得生・此土入聖
彼土得生は浄土に往生すること。彼土得聞と同義。此土入聖はこの世において覚りを得ること。光宗(一二七六—一三五〇)『渓嵐拾葉集』一五では、諸宗の念仏を説明するなかで、「聖道は此土入聖得果の者なり。浄土宗は彼土得聞の機なり」(正蔵七六・五五二上)と述べ、此土入聖と彼土得聞をもって聖道門の諸宗と浄土宗を区別している。此土入聖が聖道門を表すことは『決疑鈔』に「今、(選択)集の意を按ずるに、此土入聖を総じて聖道と名づけ、他力往生をすなわち浄土と名づく」(浄全七・二〇一下)とあることからも理解される。彼土得生は、義山『無量寿経随聞講録』において「彼の土得生の者は仏願に乗じるをもって、速やかに漏尽を得。これ生得の果報にして、全く修習得にあらず」(浄全一四・三一三上)と述べられるように、極楽に生まれることであり、この世では修行によって断つべき煩悩を、仏願力によって生まれながらに断じているとされる。
【資料】『往生論註』上、『法事讃』上、『選択集』六
【参照項目】➡聖道門・浄土門
【執筆者:杉山裕俊】