「三階教之研究」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:24時点における最新版
さんがいきょうのけんきゅう/三階教之研究
矢吹慶輝著。昭和二年(一九二七)六月、岩波書店刊。大正五年(一九一六)より調査されたスタイン本三階教典籍を研究対象として、同一一年に提出された学位請求論文の再稿であるが、初稿本および第六断片、京都富岡家蔵の第二〇断片は翌年の関東大震災により焼失してしまったため、新たにペリオ本典籍をも加えたうえで出版されたもの。三階教研究の先鞭をなす大著。矢吹はスタイン・ぺリオ収集の敦煌文献より三階教典籍を二〇断片ほど捜し出し、三階教史、教籍史、教義および実修を体系的に紹介した。古来邪宗の典型とされていた三階教であるが、教祖信行(五四〇—五九四)の行業は後人にも刺激を与えたものであるとの見解を示し、隋・唐期仏教においても新しい見方を提示した。さらに本書には大英博物館・パリ国立図書館より将来した『三階仏法』『対根起行法』『七階仏名経』など敦煌写本一六本と本邦本『三階仏法』の翻刻が収録されており、三階教文献の引用は本書に基づいてなされる場合が多く、有用性は高い。著者は本書により学士院恩賜賞を受賞している。
【執筆者:石上壽應】