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「破地獄偈」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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2018年3月30日 (金) 06:31時点における最新版

はじごくげ/破地獄偈

地獄の苦しみを除く功徳があるとされる偈文。「若人欲了知にゃくにんよくりょうち 三世一切仏さんぜいっさいぶ 応観法界おうかんほうかいしょう 一切唯心いっさいゆいしんぞう」。『八十華厳』(正蔵一〇・一〇二上~中)に出る。過去・現在・未来の一切の仏を明らかに知りたいと望むならば、仏の世界の本質をよく観察せよ、すなわち一切は心が作りだしたものである、との意。破地獄という偈題は、『華厳経疏』二一(正蔵三五・六五九上)に、「この偈を受持すればよく地獄を破す」とあるのに基づく。あるいは『華厳経演義鈔』一五(正蔵三六・一一六中~下)の中に、王明幹が戒行なく死んで地獄に行ったとき、地獄の門前の地蔵菩薩がこの文を授け、苦を受けている人も皆解脱を得たとの逸話による。『諸回向宝鑑』の「施餓鬼法」(一・二八ウ)では、破地獄偈として禅宗の『諸回向清規』五(正蔵八一・六八五中)と同様漢音で読むように指示している。ただし、『諸回向宝鑑』では「水向回向文」(二・二八オ)としてもこの偈を載せるが、そこでは呉音読みとなっており、使い分けがあった。『法要集』では、棚経施餓鬼会に指示がある。棚経では節なしだが、施餓鬼会では節付きで三唱する。三唱の指示は『施食盆供弁誤せじきぼんぐべんご』にあり、『法要集』(昭和一四年版)で明記された。板倉貫瑞は『蓮門小子の枝折』(浄土宗宗務庁、一九七一)の中で、「偈は三回及び陀羅尼は七回繰り返して唱えて功力現わる」と述べている。


【執筆者:巖谷勝正】