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「極楽浄土論」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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2018年3月30日 (金) 06:23時点における最新版

ごくらくじょうどろん/極楽浄土論

松本文三郎著。明治三七年(一九〇四)九月、金港堂刊。平成一八年(二〇〇六)二月、再刊(『東洋文庫』七四七『弥勒浄土論・極楽浄土論』平凡社)。極楽浄土阿弥陀仏の起源についてヨーロッパの研究を参照し、その歴史的事実を解明した研究書。第一章「他力念仏」は他力教が古代インドに萌芽し、仏滅後、大乗仏教でインドを席捲したと述べる。第二章「浄土」の第一節「阿弥陀経平等覚経極楽世界」はその所説を整理、第二節で『大善見王経』の浄土説、さらに『阿弥陀経』と比較する。第三節では婆羅門教の北俱盧洲ほっくるしゅうと先の二経を比較。第三章「阿弥陀仏」では第一節で阿弥陀の意義と異名、第二節「西方世界」では大乗経典所説の仏国土について述べる。本書は極楽浄土の起源について『長阿含経』一七の『大善見王経』およびその漢訳経の相当箇所にある大善見王の王城クサーヴァチー(拘尸婆帝)の描写に注目し、『阿弥陀経』と『平等覚経』の所説に比べ、極楽観念が『大善見王経』に求められるとする。また婆羅門教の北俱盧洲が『大善見王経』と『阿弥陀経』の所説に一致すると指摘。結論として『阿弥陀経』の極楽観念が大善見王と北俱盧洲の両神話に由来すると述べる。さらに阿弥陀仏の起源については大善見王が光明の源泉としての日輪になぞらえられ、また長寿無量の神力を有することから阿弥陀仏の光寿無量の二徳に結びつけられたと主張する。


【執筆者:大南龍昇】