「法然聖人絵」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:32時点における最新版
ほうねんしょうにんえ/法然聖人絵
現存四巻(もとは六巻か)。個人所蔵。首題に「法然聖人絵」、尾題に「黒谷上人絵伝」とあり、通称は『弘願本』という(巻末に「釈弘願」と記すのによるが、これは所有者の名前)。作者不詳。絵巻物形式の法然伝。法然の幼児期の異相と黒谷下山の記事が信瑞の『黒谷上人伝』に依拠しているので、同書編纂の弘長二年(一二六二)以後の成立と考えられる。本書の詞書が真宗高田派本山の専修寺に所蔵する『法然上人伝法絵〈下巻〉』(高田本)とほとんど同一であるので、『高田本』は本書の詞書だけを抜粋したものとみられる。とすれば、本書は『高田本』が書写された永仁四年(一二九六)以前の成立となる。真宗系の法然絵伝と見なされているが、聖光や源智、あるいは明遍や敬仏房などの高野聖に、それぞれ伝えられた法然の法語、例えば三重の念仏の話、法然と阿波介の申す念仏の優劣、『一枚起請文』の授与、敬仏房との問答などを収めているので、一つの門派に限定されない態度をもつ人の手で作られた絵伝である。法然が厠で念仏を称えた話は他伝には見えない。
【所収】法伝全
【参考】『重文法然上人絵伝』(大法輪閣、一九八五)、小山正文『親鸞と真宗絵伝』(法蔵館、二〇〇〇)、中井真孝「『法然聖人絵』(弘願本)について」(『佛教大学宗教文化ミュージアム研究紀要』七、二〇一一)
【執筆者:中井真孝】