「歌念仏」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:20時点における最新版
うたねんぶつ/歌念仏
念仏芸能の一種で曲調や囃子詞などをつけて歌うように称える念仏のこと。引声念仏や踊躍念仏から発生したもので、民衆教化のために始められたとされる。現存する例として、滋賀県栗東市上砥山の浄西寺(浄土宗)に伝わる「歌念仏」や、福島県白河市付近の村々に伝わる「歌念仏踊」などが挙げられる。前者は、昭和の初めに一時途絶えるも、昭和一二、三年(一九三七、三八)頃復活し、往時は栗東市金勝地区における寺院で広く行われていたが現在では浄西寺でのみ行われている。歌念仏は、前鐘、迎い鐘、送り鐘とも言われ、法要の開始前の導師・大衆の入退堂、あるいは説教における講師の入退堂の際に称えられる。太鼓、雲版の他に双盤四個が法具として使用され、服装は定例法要の際は平服、大きな法要の際は紋付きを着用する。後者は、江戸時代中頃から流布したとされ、空也や一遍が広めたものとも伝えられているが、この地方に広がった原因は明らかになっていない。演目は、読切り物や段物など二八種があり、それぞれに「オヤ(親)」、「シへン(主編、旨編、四返)」、「ナガシ(長噺)」があって、旋律と速度が三様に変化する。『道成寺物語』の主人公・安珍僧の供養を目的に、毎年三月二七日に行われており、安珍念仏踊りとも呼ばれている。昭和二七年(一九五二)に「奥州白河歌念仏踊振興会」が結成され、平成五年(一九九三)に県重要無形民俗文化財となった。
【参考】佛教大学民間念仏研究会編『民間念仏信仰の研究 資料編』(隆文館、一九六六)
【参照項目】➡安珍念仏踊り
【執筆者:齋藤知明】