「偈」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:23時点における最新版
げ/偈
仏の教法や仏の功徳をたたえる韻文のこと。漢訳仏典の文章様式は長行(散文)と偈(韻文)からなっており、偈は梵語のⓈgāthāの音写語であり、伽他・伽陀とも音写し、偈頌・頌とも訳す。中国における最初の漢訳者である後漢の安世高は、Ⓢgāthāを『七処三観経』で「絶を説く」(正蔵二・八七六上)と漢訳したり、また『道地経』では「縛束して説く」(正蔵一五・二三一上)などと説明句によって漢訳し、句中の字数は一定していなかった。しかし同じ後漢の支婁迦讖は『般舟三昧経』でⓈgāthāをはじめて「偈」(正蔵一三・九〇六上)と音写し、各句の字数を五言や七言のように斉言に、そして句数を偶数句でまとめると、それ以後の偈はこの形式が踏襲され定着するようになる。後漢から南北朝にかけては五言や四言の偈が多く漢訳され、隋からは中国文学の趨勢と歩調をあわせるかのように七言で漢訳される傾向が強まる。インド西域の偈は音節の数と長短で決まるが、漢訳された偈は中華の韻文になぞらえて一句の音節を均一化し、まれに押韻が配慮された上で翻訳される。また漢訳仏典だけでなく、後には浄土教の礼讃儀礼においても礼讃偈を唱えるようになる。浄土や仏の功徳を讃歎する偈は仏教音楽であり、唐代の寺院においては大衆的な儀礼として僧俗が一体となって唱和されていた。
【参考】齊藤隆信『漢語仏典における偈の研究』(法蔵館、二〇一三)
【参照項目】➡長行
【執筆者:齊藤隆信】