「浄土三部経音義」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:25時点における最新版
じょうどさんぶきょうおんぎ/浄土三部経音義
一
四巻。『浄土三部経音義集』ともいう。信瑞纂。嘉禎二年(一二三六)の自序がある。「浄土三部経」の主要語句について、その音韻と釈義とを略註した書。第一巻は『無量寿経』上、第二巻は『同』下、第三巻は『観経』、第四巻は『阿弥陀経』に配している。音義は経典を読誦し意義を理解する上において必要不可欠のものであり、本書は日本で撰述された三部経の音義としては最古のものとされる。引用書は多種にわたり、仏典に限らず、『広韻』『東宮切韻』『倭名類聚抄』『玉篇』の他、『一切経音義』『翻訳名義集』『梵語勘文』『梵唐千字文』などの諸典より抜粋して註解をほどこしている。『東宮切韻』『梵語勘文』などの散逸した書からの引用も多く、音韻学・梵語学の研究には貴重な資料である。
【所収】続浄四、正蔵五七
【参照項目】➡信瑞
【執筆者:原口弘之】
二
二巻。くわしくは『浄土三部経附六時礼讃偈音義』という。珠光撰。天正一八年(一五九〇)の自序。「浄土三部経」および善導『往生礼讃』に用いられた文字について、それぞれ音と訓と意味を示したもの。序文によると『玉篇』によって篇格ならびに音義を定め、切訓の経の本旨にかなわない文字は、『韻会』『広韻』等の字書によって補ったという。また末尾に小異字、両音文字を収録している。内容は経文偈文の文字を漢字の部首により、第一「人言部」から第二六「単字雑部」までの二六節(上巻第一~一二、下巻第一三~二六)に分け、総計「単字一六一九字」の音と訓と意味をあかし、つぎに「分毫異字例」として「釋」と「𥼶」、「傳」と「傅」などの似形異字一八四字を列し、また「両音異訓字」として「易」「悪」など一五字について音と訓と意味とを略解し、終わりに「総合一千八百一十九字」と記されている。三部経および礼讃の音韻研究には重要なものである。大正大学に正保—寛文(一六四四—一六七三)の頃のものと推定される版本がある。
【所収】続浄四
【執筆者:原口弘之】
三
五巻。版本外題は『日本撰述浄土三部経音義』ともいう。浄土真宗の乗恩撰。宝暦五年(一七五五)の自序。「浄土三部経」の主要語句を註解したもので、正しい発音と読みと意義とを解説したもの。玄応および慧琳の『一切経音義』、慧苑の『華厳音義』などによって音韻を正し、諸家の章疏によって詳細なる注釈をほどこしている。さらに、『梵語雑名』および各種の陀羅尼等によって梵名を考え、『阿弥陀経』に関しては世に伝写している梵本によって対照している。また、三部経の文字について、建仁寺および厳島神社の古写本により謬漏を正し、宋本・明本・高麗本によって校正し、異同を掲げている。第一から四巻は『無量寿経』(第一から三巻は上、第四巻は下)、第五巻は『観経』と『阿弥陀経』について注解している。版本の初めに宝暦七年(一七五七)の園城寺円満院(天台宗)祐常の序、同八年の興正寺(真宗)闡揚(法高)の序、宝暦五年の自序があり、末尾に同七年の了蓮寺(浄土宗)文雄の跋がある。
【執筆者:原口弘之】