「トーテミズム」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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トーテミズム/totemism
未開社会における宗教と社会組織の関係を説明しようとする学問上の概念。研究者によって用いられ方が違うため一義的な定義は困難であるが、おおよそ、社会の中のある集団が特定の種の動植物や事物に対して特殊な信仰を有したり、それに基づいた制度を有している場合、特定種をトーテムといい、トーテムをめぐる総体をトーテミズムという。一般にはある親族集団の先祖とトーテムが結びつけられることで、その集団にはトーテムの殺害や採集が禁止されたり、種の繁栄を願い定期的にトーテムを祭祀したりする。代表的には、オーストラリアのアボリジニ、北米の先住民族などが挙げられるが、南米やアフリカなどの未開社会にも多く見られる現象である。一九世紀後半から二〇世紀前半にかけて西欧では宗教起源論が盛んであった。E・デュルケームはアボリジニに広く見られる現象であったトーテミズムを宗教の原初形態と考えた。しかし、その後、世界各地で多数のトーテム種や祭祀・制度形態の違いが見られ、トーテミズムをめぐって多くの人類学者が研究を行った。それに終止符を打ったのがC・レヴィ=ストロースである。彼は、トーテミズムの基底には、親族集団の識別と自然種の区別を関係付ける特殊な思考形式があるとして、従来の議論に大きな衝撃を与えた。
【参考】E・デュルケーム著/古野清人訳『宗教生活の原初形態』(岩波文庫、一九七五)、C・レヴィ=ストロース著/大橋保夫訳『野生の思考』(みすず書房、一九七六)
【参照項目】➡宗教人類学
【執筆者:江島尚俊】