貞元新定釈教目録
提供: 新纂浄土宗大辞典
じょうげんしんじょうしゃっきょうもくろく/貞元新定釈教目録
三〇巻。『貞元録』『円照録』ともいう。西京西明寺沙門円照撰。中国の唐代の貞元一六年(八〇〇)に編纂された勅撰訳経目録。前代の訳経目録を整理・検証した智昇の『開元釈教録』(七三〇年撰)から強い影響を受けつつ、その後新たに翻訳された経典を追加し経録の誤りを正したもの。その巻二九・三〇は入蔵録と呼ばれ、後代の一切経書写の指針として重視された。近年の古写経研究の進展により、『正蔵』の底本である高麗版(再雕本)の『貞元録』には三階教に関する経典の削除など後世の編集の存在が指摘され、原本『貞元録』の復元には古態を留める平安写経などの伝本を用いた考証が必要となっている。さらに平安期の一切経は数ある経録の中でも本書を規模として書写されていることも明らかとなり、あわせて『選択集』に引用される『貞元録』へ着目した研究が法然の披見した一切経の性格を浮き彫りにしている。
【所収】正蔵五五
【参考】『塚本善隆著作集』三(大東出版社、一九七五)、『中国・日本経典章疏目録』(『七寺古逸経典研究叢書』六、大東出版社、一九九八)、落合俊典「報恩蔵の一切経について」(伊藤唯眞編『日本仏教の形成と展開』法蔵館、二〇〇二)
【執筆者:能島覚】