産土神
提供: 新纂浄土宗大辞典
うぶすながみ/産土神
産土とはそれぞれの人々の出生地の意であり、すなわち産土神は生まれた土地の鎮守あるいはそこに祀られる神々を意味する。産土という語は必然的に子どもの出生を連想させる。たとえば産土神の社の砂を出産時の御守りにする例が見られることや、近世には同じ産土神を信仰する者たちを産子と呼んだことなどから、元々この神は子どもの誕生と深く関わるものと信じられてきた。また近世には、産土神はその土地の住人たちの祖霊とともに、郷土の地とそこに住む人々を守護する存在であると信じられるようになり、その結果、産土神と氏神の区別が曖昧になっていった。氏神は産土神とは異なり、元は古代以降の血縁集団である氏族の守護神を意味したが、中世以降に村落社会の形成が進む中で、土地の鎮守である産土神と氏神が徐々に混同されるようになってゆく。明治になって氏子制度が整備されてくると、やがて産土神は氏神とほぼ同一視されるに至り、故郷の鎮守神として、氏子たちの日々の信仰の対象となるのである。
【参考】柳田国男「氏神と氏子」(『柳田国男全集』一四、筑摩書房、一九九〇)
【参照項目】➡氏神
【執筆者:八木透】