操作

生殖補助医療

提供: 新纂浄土宗大辞典

せいしょくほじょいりょう/生殖補助医療

生殖現象の人為的操作、特に排卵、受精、着床などの生殖現象での不妊治療のこと。生殖補助医療には体外受精、顕微授精、胚移植、精子バンク、卵子提供、凍結受精卵利用、減胎手術、着床前遺伝子診断、代理懐胎など多くの方法論があり、実施に移されている。これらは生殖医学で得られた科学的知見を実地応用するものであり、人の命を取り扱うものであるから生命倫理上の多くの問題を内包している。生殖補助医療の具体的な適用が急速に進んでいる背景には不妊症の増加がある。その原因には婚姻年齢の高年齢化や環境ホルモンなどの影響が指摘されている。不妊症とは、避妊をしていないのに二年以上にわたって妊娠が成立しない状態と定義される。日本における夫婦間の妊娠率は避妊をしなければ結婚後一年で八〇%、二年間で九〇%であり、残る一〇%が不妊症とされ、その割合は妊娠を希望している夫婦の約一割に達している。このような状況から生殖補助医療に対する要望は拡大する一方であるのに対して、人為的な介入がどこまで許されるかの議論は対応が遅れている。新しい問題が出るたびに、日本産科婦人科学会の見解として対応方法が示されているが、学会の自主規制であり法的な強制力がないのが大きな問題点である。今後の問題として、ヒトクローンの作製は禁止されているが、その他に、精子や卵子を選択し受精卵の段階で遺伝子操作を行って望んだ外見や知力・身体能力をもった子供を作るというデザイナーベイビーの概念も提案されており、倫理的な側面から注意深く監視する必要がある。


【参照項目】➡生命倫理


【執筆者:今岡達雄】