熊谷の入道へつかわす御返事
提供: 新纂浄土宗大辞典
くまがいのにゅうどうへつかわすおへんじ/熊谷の入道へつかわす御返事
一
法然が熊谷次郎直実に宛てて記した返信。直実の疑問に法然が答えたもの。文末に五月二日とあるが、具体的な年号は不明。『四十八巻伝』二七によれば、元久年間(一二〇四—一二〇六)以降のものとなるであろう。内容は、まず念仏の行が阿弥陀仏の本願であるとし、極楽往生を願う人はまず念仏を称え、もし他の行を修したければ、念仏を称えた上で行うべきであると説く。そして念仏以外の行のみでは往生は叶わないと述べ、阿弥陀仏の化身である善導もただ念仏のみが往生の業であると述べているとする。次に、持戒や孝養などについて述べ、これらの善根は、念仏を行う中で暇があれば修めるべき行とする。また持戒については、一心に多くの念仏を称えれば、少々の破戒は往生の障りにならないとする。最後に、孝養は仏の本願ではないとしつつも、直実の母のことにふれて、高齢で直実一人を頼みとする母を大事にし、浄土からの迎えがあるかもしれないという心構えを持つように勧めるべきである、としている。
【所収】聖典四・五四三~五、同六・四一五~六、昭法全五三五~六
【資料】『鎌倉 源空消息 証空消息 熊谷直実誓願状 迎接曼陀羅由来』(『日本名跡叢刊』五七、二玄社、一九八二)
【参考】安達俊英「御法語の背景—法然上人典籍研究」二一~二三(『宗報』平成一四年一〇月号~一二月号)、浄土宗総合研究所『法然上人のご法語①消息編』(浄土宗、一九九七)
【執筆者:石田一裕】
二
法然が熊谷次郎直実に宛てて記した返信。四月三日付となっているが、具体的な年号は不明。自身の臨終時の瑞相についての直実からの問いについて懇切に回答し、一層念仏に励むべきことを促している。
【所収】聖典四・五四五、同六・四一九、昭法全一一四五
【執筆者:編集部】