さんしゅのあいしん／三種の愛心

人間が命終に臨んだ際に起こす三つの執着心である境界きょうがい愛・自体じたい愛・当生とうしょう愛のこと。三種愛、三愛ともいう。境界愛とは、妻子・親族・家屋・財産等に対する執着心のことをいい、自体愛とは、自己の身命に対する執着心をいい、当生愛とは、命終の後に自らの生がどうなるのかわからない不安をいう。法然は『逆修説法』一七いちしち日において「いわゆる疾苦身を逼せまって将まさに死なんと欲するの時、必ず境界・自体・当生の三種の愛心起るなり。しかるに阿弥陀如来、大光明を放って行者の前にあらわれたまう時、未曽有の事なる故に帰敬の心の外には他念なし。しかれば三種の愛心を亡じてさらに起ることなし」（昭法全二三四）と述べ、阿弥陀仏の来迎によって三種の愛心が滅することを明らかにしている。また『往生浄土用心』では「三種の愛心起りそうらいぬれば、魔縁便を得て正念を失いそうろうなり。この愛心をば善知識の力ばかりにては除き難くそうろう。阿弥陀仏の御力にて除かせたまいそうろうべくそうろう」（聖典四・五五五／昭法全五六三）と述べ、三種の愛心は阿弥陀仏の力によって取り除かれるとしている。

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【資料】『往生要集』中末、『翼賛』二三

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【執筆者：曽根宣雄】