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Z0400 空花和歌集 湛澄 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
Z08_0344A01: る義あり。是あふひを逢といふにそへて。見佛の念
Z08_0344A02: のたえざることをよめり。我は常に餘事をおもは
Z08_0344A03: ず。ただかの佛にまみえんことをねがふ。いつか往
Z08_0344A04: 生の業成じて。彌陀の慈父にあふべきぞとなり。○
Z08_0344A05: あふひ草とは。世に日向葵などいひて。花をもてあ
Z08_0344A06: そぶ草にはあらず。賀茂の神山などに生ひて。()(アレ)
Z08_0344A07: の日。神事に用ひる二葉の草なり。異名もろ葉草。二
Z08_0344A08: 葉草とも云ふ。淸少納言が枕草子に。葵いとおかし。
Z08_0344A09: 祭のおり。神代よりして。さるかざしとなりけん。
Z08_0344A10: いみじうめでたし。物のさまもいとおかしとかけ
Z08_0344A11: り。公事根源云。四月中の酉の日。賀茂祭。むかし夢
Z08_0344A12: の吿侍りしより。けふ人〻葵桂の鬘をかくる也。賀
Z08_0344A13: 茂松尾の社司。まへの日より。しかるべき所々へた
Z08_0344A14: てまつる云云。是をもろかづらとよめり。八雲御抄
Z08_0344A15: 二。云。葵もろかつら。もろ葉草。二葉。萬葉に。あふひ
Z08_0344A16: 草花さくとよめり。一向に見あれの比の物なり云云。
Z08_0344A17: ○心のつまとは。心の端と云ふ詞なり。心の奧。心の
Z08_0344A18: 末。心の內。心の外などよめるたぐひ也。つまごゑ
Z08_0344A19: といふ詞も。(ツマ)(ゴヘ)と書く。摠じて物の端をつまとい
Z08_0344A20: ふ。源氏物語に。みすのつま。屛風のつまなど云ふ
Z08_0344B01: 詞おほし。枕草子にも。屋のつま。物のつまとかけ
Z08_0344B02: り。古歌にも。衣のつま。草のつま。屋のつまなどお
Z08_0344B03: ほくよめり。葵は物の端にかくる草なれば。心のつ
Z08_0344B04: まといへり。又上の句の。あふひ草の緣にて。つまと
Z08_0344B05: 讀り。その例いかほどもあり。
Z08_0344B06: 伊勢物語の歌に
Z08_0344B07: むさし野はけふはなやきそ若草の
Z08_0344B08: つまもこもれり我もこもれり
Z08_0344B09: 拾玉集に
Z08_0344B10: 世をそむく宿にはゆかしあやめ草
Z08_0344B11: 心のとまるつまとなりけり
Z08_0344B12: 古今に
Z08_0344B13: 春の野のしけき草葉のつまこひに
Z08_0344B14: とひたつきしのほろ〻とそなく
Z08_0344B15: 延五記云。物のはしをつまといへり。草のつまと
Z08_0344B16: は。草のもえ出たる也云云。○かけぬ日ぞなきとは。
Z08_0344B17: あふひといひ。つまといへる緣の語也。心にかくる
Z08_0344B18: に。あふひをそへたる作例またおほかり。
Z08_0344B19: 新撰六帖に
Z08_0344B20: もろかつらあふひまれなるかなしさを

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