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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0429A01: 時に法を聞て。樂のみありて。苦の名をだにきく事
J18_0429A02: なく。證得不退入三賢の菩薩となるにたとふ。必必
J18_0429A03: 安心起行を違て。流轉生死の族に與する事なかれ。
J18_0429A04: 淨土の安心起行といふ事は。南無阿彌陀佛と申せ
J18_0429A05: ば。我如き罪深ものも。本願に乘ずるが故に。往生
J18_0429A06: するに違ひなしと。おもひ定むるが安心。それより
J18_0429A07: おこたらず稱るを起行といふ。此外には別の子細候
J18_0429A08: はず。ただ日日食を飡ふごとくに心得べし。まづこ
J18_0429A09: の食は饑をたすくるものと知たるが安心なり。夫よ
J18_0429A10: り箸をとりて食ふが起行也。空腹なる時に。ただ食
J18_0429A11: ばやとおもふばかりにては。决して腹に盈たぬな
J18_0429A12: り。飢饑の年には。盜ても喰ふものあり。是を飯の
J18_0429A13: 安心起行利益といふなり。淨土の法門も信ずれば往
J18_0429A14: 生すといふ安心を。决定したるばかりにては。往生
J18_0429A15: はならぬ也。必箸を取て食するに等しく。おこたら
J18_0429A16: ず名號を唱ふるなり。又數遍を制止するは。食は唯
J18_0429A17: 一口なるべし。餘分はわろしと制するが如し。三界
J18_0429B18: の窮子は隱しても稱ふべし。又食事は。日日の飢を
J18_0429B19: 治す。念佛は永劫の重病を治す。また此食ははづか
J18_0429B20: に五十年百年の命をたすく。念佛は彌陀佛國に生れ
J18_0429B21: て。量なき壽命をたもつなり。
J18_0429B22: 又曰。生生世世。父母の因縁ある事を示すべし。今
J18_0429B23: 日かくの如く道塲に集會したるものは。皆是德本が
J18_0429B24: 爲には。久遠塵點劫の父母なり。ちちははの因縁な
J18_0429B25: きものは來らぬなり。若我をそしりなどして來らざ
J18_0429B26: るは。我昔不孝なりし父母なるべし。其不孝の習氣
J18_0429B27: の殘りて。さていま德本が名を聞ても。猶腹だち瞋
J18_0429B28: るなり。德本いま懺悔して。むかしの不孝ゆるされ
J18_0429B29: よとて。南無阿彌陀佛と稱るぞ。さるほどに。本
J18_0429B30: 尊。彼心を開き。意を解て。やがて又親子の對面す
J18_0429B31: べき事になるべし。いまよろこびてあつまり詣たる
J18_0429B32: ものは。此方むかし孝行をしたりし。その習氣が殘
J18_0429B33: て。何となくなつかしくて。行者とは如何なる人
J18_0429B34: ぞ。見て來んなといひて。來れる人なり。かくいは

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