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J2740 仏定和尚行業記 大察・隆円 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0355A01: き。
J18_0355A02: 師衆を攝し。他を警策せらるるには。その機根に對
J18_0355A03: して。まづ佛門の通規に順じて。觀念座禪の法なん
J18_0355A04: どをも敎示し。持戒讀誦をも勸入せらるれども。その
J18_0355A05: 自行には。一向專修の但念佛のみ。申し來りまうしさ
J18_0355A06: らるるありさま。あたかも一丁字をしらざる愚夫の
J18_0355A07: ごとし。時ありて本願深重のものがたりなんどに
J18_0355A08: は。生死解脱時既にいたれり。みづから慶にあまり
J18_0355A09: ありとて。落涙せらるるさま。いとたふとかりき。
J18_0355A10: 師。佛像經卷を。尊崇せらるること尤ふかし。佛菩
J18_0355A11: 薩の形像にむかへば。大賓に對するがごとく經論を
J18_0355A12: とりては。頂戴して佛恩を思念せらるるさまなり
J18_0355A13: き。されば常のことばにも。佛經は如來の權智慈光
J18_0355A14: 凝結せるなり。このゆえにしばらくも。耳にきき口
J18_0355A15: に誦ずれば。佛種子を引出す。よむことあたはざる
J18_0355A16: ものは。ただ常に頂戴恭敬すべし。
J18_0355A17: 師。智惠光院にて。本尊の座光をみづから洗浴せら
J18_0355B18: れしとき。一夜佛像を戸壁にもたし置れしが。その
J18_0355B19: 夜はいねずして。戰戰兢兢として。念佛して夜をあ
J18_0355B20: かされき。これらにて。その事狀を察すべし。
J18_0355B21: 師。事に臨で。即時に決斷決擇せらるること。もと
J18_0355B22: も速なり。またその他に對しても。機辨敏捷なるこ
J18_0355B23: と常人にこえたり。このゆえにその都鑑の職にあり
J18_0355B24: しときも。人あるひはにくみそしり。讎敵のごとく
J18_0355B25: 思へるものあり。また親みほめて。骨肉のごとくお
J18_0355B26: もふものあり。師つねに笑ていはく。おのれが得か
J18_0355B27: たに人をほめそしるは。庸愚の人情のみ。いかんと
J18_0355B28: もせんすべなしと。
J18_0355B29: 師。説法せらるるには。直に經論祖釋をのべて。説
J18_0355B30: 草といふものなし。しかれども法譬因縁。辨釋分明
J18_0355B31: にて。智者もあなどらず。愚者もよく會得せり。さ
J18_0355B32: て因縁説は。あたかもその世。その時にありて。目
J18_0355B33: のあたりその事實を。見るがごとく辨ぜられしか
J18_0355B34: ば。長話といへども。きくもの食頃の思ひをなせ

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