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J2740 仏定和尚行業記 大察・隆円 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0356A01: り。
J18_0356A02: 師。その先師戒譽和尚。及び兩親のことを語りいで
J18_0356A03: では。落涙せらる。またその毎月の忌日には。前夜
J18_0356A04: より殊さら精修して。當日には。みだりに言葉をも
J18_0356A05: 出されず。このゆえにその日は。弟子等も。殊さら
J18_0356A06: に畏敬戒愼せり。
J18_0356A07: 師。尼弟子を度せられしことなし。たまたま發心し
J18_0356A08: て剃髮を願ふものには。本願たのもしく。念佛大利
J18_0356A09: あることを説示して。その落髮は制せられけり。み
J18_0356A10: づからいはく。佛の萬德圓滿なるすら尼を度して。
J18_0356A11: 正法五百年减ぜりとの給へり。况や末代の凡僧は。
J18_0356A12: 誓て尼弟子を持べからず。譏嫌をまもり。正法を護
J18_0356A13: 持せんと欲するもの。よろしく用心すべし。
J18_0356A14: 師。婬肉の念ある風情なし。壯年より奉侍せる弟子
J18_0356A15: 等も。そのよく淸淨なる事狀を尊崇せり。或時しめ
J18_0356A16: して云。婬肉すら斷れざるは。菩提心の。眞實なら
J18_0356A17: ざるなり。若はつかにも。婬肉の念發らば。たちま
J18_0356B18: ち鐵鎚をもて。石上にて。生支を打ひしぐべし。舌
J18_0356B19: 頭をかみきりて死すべしとおもふべし。尊無過上の
J18_0356B20: 佛子として。婬女にたはぶれ。魚鳥の肉を喰ふなん
J18_0356B21: どやうの風情にては。實に出家のかひもなきことな
J18_0356B22: りと。はげしく誓願を發すべきなり。
J18_0356B23: 師。但州京師にて。すべて信施の多少の出納をはか
J18_0356B24: らるることなし。皆隨侍のものに一任して。みづか
J18_0356B25: ら忘れたるがごとし。たまたま不足なるを尋求する
J18_0356B26: をききては。さまでにせずともすみぬべし。しひて
J18_0356B27: 算數するは。出家の所應にあらずとて。いたく制誡
J18_0356B28: せられけり。しかれども財寶散失することなく。生涯
J18_0356B29: 自由なりけるも一德といふべし。
J18_0356B30: 師。專念寺にて。ある夜讀書せられしに。鼠大にさは
J18_0356B31: ぎて。けしからぬ音しければ。師聲をはげましてい
J18_0356B32: はく。鼠よ鼠よ我讀書のさまたげなしそ。ただし
J18_0356B33: づかなるべしと制せられしかば。その言下にたちま
J18_0356B34: ち。しづまりてさはがざりけり眞氣ものにせまる。

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