浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0678A01: | 精舍もなをおほかるものを近きわたりの門裔の似げ |
J17_0678A02: | なく法令もゆるひたるやうに聞え侍れはおよはすな |
J17_0678A03: | から昔にかへらん事を願ふのみ夫開山上人はひたす |
J17_0678A04: | ら世勢を遠さけ勤行精進にをはしけれはふかく生死 |
J17_0678A05: | を怖るるともから歸敬渴仰し徒弟日日におほく淸衆 |
J17_0678A06: | 月月にあつまりておのつから一家の風儀をなせり世 |
J17_0678A07: | 擧て捨世流義と貴みけり抑捨世とは遁世の事をいへ |
J17_0678A08: | る也凡出家せるは恩愛の家を遁れ出て世間の名利を |
J17_0678A09: | 離れ五欲を憎み棄べき身にしあれど世の末のありさ |
J17_0678A10: | ま形は剃髮染衣しながら心は五欲の境に馳かりなる |
J17_0678A11: | 名利を悅ひて美服滋味を好み住處を華麗にし勢ひ猛 |
J17_0678A12: | に罵り且は奢且はほこりてつゆ耻かはしともおもほ |
J17_0678A13: | へぬ機はひ世におほかる樣を上人獨りいたましと見 |
J17_0678A14: | そなはし光をつつみ德を隱して遁れさせ給ふ是なん |
J17_0678A15: | 出家中の遁世にして眞の出家なるを捨世とは名付た |
J17_0678A16: | るなりむかし元祖大師臺嶠の交衆を辭して黑谷に幽 |
J17_0678A17: | 居し玉へる今上人の栴檀林に香衣をすてて天智庵の |
J17_0678B18: | とぼそをひそめ玉ふも共に尊き御心はへなり近き頃 |
J17_0678B19: | よりいよいよ世下りて心つたなく勤をろそかにして |
J17_0678B20: | 我上人の流を汲人たにも捨世の名をわすれ動すれは |
J17_0678B21: | 榮名を羨み衣の色を花やかにし法の服を錦にするも |
J17_0678B22: | あり正定業に何の足らさる所ありて經卷陀羅尼を誦 |
J17_0678B23: | し施食奠祭を開山高德の掟には背くならし其掟今に |
J17_0678B24: | 至りても關東檀林の座位に隨ひ出世の年月をとはさ |
J17_0678B25: | るこそ我山の淸風なりかしこきをみてひとしからん |
J17_0678B26: | 事をおもはさらめやしかるに近世にいたりて官寺に |
J17_0678B27: | 混し藍輿も蘧蒢荇蓎にあやなし官寺よりもなほ聲華 |
J17_0678B28: | に成ぬる事上人の行狀には違ぬしかのみならす木魚 |
J17_0678B29: | を用ひて念佛せるやから多し唐土はいさしらす本朝 |
J17_0678B30: | にては行基菩薩空也上人を初として稱名にはかねを |
J17_0678B31: | 打念佛し玉ふ事世に知れるがごとし是また奇を好み |
J17_0678B32: | ことやうに名を求めて利をつりぬるなかたちにせん |
J17_0678B33: | とはかかることをやなすらん昔より成し來れる道具に |
J17_0678B34: | て足ぬへししかるに我祖の式にもとりて奇なる鳴物 |