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J2530 称念上人行状記 妙阿 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0678A01: 精舍もなをおほかるものを近きわたりの門裔の似げ
J17_0678A02: なく法令もゆるひたるやうに聞え侍れはおよはすな
J17_0678A03: から昔にかへらん事を願ふのみ夫開山上人はひたす
J17_0678A04: ら世勢を遠さけ勤行精進にをはしけれはふかく生死
J17_0678A05: を怖るるともから歸敬渴仰し徒弟日日におほく淸衆
J17_0678A06: 月月にあつまりておのつから一家の風儀をなせり世
J17_0678A07: 擧て捨世流義と貴みけり抑捨世とは遁世の事をいへ
J17_0678A08: る也凡出家せるは恩愛の家を遁れ出て世間の名利を
J17_0678A09: 離れ五欲を憎み棄べき身にしあれど世の末のありさ
J17_0678A10: ま形は剃髮染衣しながら心は五欲の境に馳かりなる
J17_0678A11: 名利を悅ひて美服滋味を好み住處を華麗にし勢ひ猛
J17_0678A12: に罵り且は奢且はほこりてつゆ耻かはしともおもほ
J17_0678A13: へぬ機はひ世におほかる樣を上人獨りいたましと見
J17_0678A14: そなはし光をつつみ德を隱して遁れさせ給ふ是なん
J17_0678A15: 出家中の遁世にして眞の出家なるを捨世とは名付た
J17_0678A16: るなりむかし元祖大師臺嶠の交衆を辭して黑谷に幽
J17_0678A17: 居し玉へる今上人の栴檀林に香衣をすてて天智庵の
J17_0678B18: とぼそをひそめ玉ふも共に尊き御心はへなり近き頃
J17_0678B19: よりいよいよ世下りて心つたなく勤をろそかにして
J17_0678B20: 我上人の流を汲人たにも捨世の名をわすれ動すれは
J17_0678B21: 榮名を羨み衣の色を花やかにし法の服を錦にするも
J17_0678B22: あり正定業に何の足らさる所ありて經卷陀羅尼を誦
J17_0678B23: し施食奠祭を開山高德の掟には背くならし其掟今に
J17_0678B24: 至りても關東檀林の座位に隨ひ出世の年月をとはさ
J17_0678B25: るこそ我山の淸風なりかしこきをみてひとしからん
J17_0678B26: 事をおもはさらめやしかるに近世にいたりて官寺に
J17_0678B27: 混し藍輿も蘧蒢荇蓎にあやなし官寺よりもなほ聲華
J17_0678B28: に成ぬる事上人の行狀には違ぬしかのみならす木魚
J17_0678B29: を用ひて念佛せるやから多し唐土はいさしらす本朝
J17_0678B30: にては行基菩薩空也上人を初として稱名にはかねを
J17_0678B31: 打念佛し玉ふ事世に知れるがごとし是また奇を好み
J17_0678B32: ことやうに名を求めて利をつりぬるなかたちにせん
J17_0678B33: とはかかることをやなすらん昔より成し來れる道具に
J17_0678B34: て足ぬへししかるに我祖の式にもとりて奇なる鳴物

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