浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
巻_頁段行 | 本文 |
---|---|
J17_0212A01: | とひ一代の御法を能能學すとも。一文不知の愚鈍 |
J17_0212A02: | の身にして尼入道の無智の輩に同して。智者の振迴 |
J17_0212A03: | をせずして。ただ一向に念佛すべしとぞ。勢觀上人 |
J17_0212A04: | 敢て披露せず。一期の間。頸にかけて祕藏せられけ |
J17_0212A05: | るを。年來師檀の契淺からざりける。川合の法眼に |
J17_0212A06: | かたり聞えけるを。懇切に望申ければ。授られてよ |
J17_0212A07: | り以來。世間に披露して。上人の一枚消息と云へる |
J17_0212A08: | もの也。 |
J17_0212A09: | 上人御往生事 |
J17_0212A10: | 同廿三日紫雲また來現す。廿四日午の尅紫雲また大 |
J17_0212A11: | にたなびく。西山の炭燒十餘人是を以て來てかた |
J17_0212A12: | る。また廣隆寺より下向の尼。路次にて是を見て來 |
J17_0212A13: | て告ぐ。上人は高聲不退の上。殊に廿四日の酉の尅 |
J17_0212A14: | より。廿五日の巳の時に至るまでは。高聲念佛體を |
J17_0212A15: | せめて無間なり。門弟等五六人づづ番づづ番に助音す |
J17_0212A16: | るに。助音の人人は自聲をほのかにすといへど |
J17_0212A17: | も。衰邁病惱の上人の音聲は。虚空法界にもひびく |
J17_0212B18: | らんと聞ゆ。誠に熾盛の御ありさま。見る人なみだ |
J17_0212B19: | をながさぬはなし。廿五日の午の尅に至ては。念佛 |
J17_0212B20: | のこゑかすかにして。高聲は時時相まじはる。既に |
J17_0212B21: | 最後に臨ければ。年來所持の慈覺大師の九條の袈裟 |
J17_0212B22: | を著し。頭北面西にふし給ふ。門弟等申て云。只今 |
J17_0212B23: | まて端坐念佛し給へるに。命終の時に至りて臥給ふ |
J17_0212B24: | こといかが。上人微咲して曰く。我今此故を述んと |
J17_0212B25: | 思ふ。汝等よく問へり。われ身を娑婆に宿す事は。 |
J17_0212B26: | 淨土の徑路をひらかんがため。今神を極樂にかへす |
J17_0212B27: | 事は。往生の軌心をしめさんがためなり。我もし端 |
J17_0212B28: | 坐せば人定て是を學ばんか。もし然ば病の身起居輒 |
J17_0212B29: | からじ。おそらくは正念を失ひてん。此義をもての |
J17_0212B30: | ゆへに。我今平臥せり。端坐叶はざるにあらず。本 |
J17_0212B31: | 師釋尊すでに頭北面西にして滅を唱へ給ふ。是また |
J17_0212B32: | 衆生のため也。我いかでか釋尊にまさるべきと。頭 |
J17_0212B33: | 北面西にして。光明遍照十方世界。念佛衆生攝取不 |
J17_0212B34: | 捨と唱へ。念佛數返の後。眠がごとくして息絶給ひ |