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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0212A01: とひ一代の御法を能能學すとも。一文不知の愚鈍
J17_0212A02: の身にして尼入道の無智の輩に同して。智者の振迴
J17_0212A03: をせずして。ただ一向に念佛すべしとぞ。勢觀上人
J17_0212A04: 敢て披露せず。一期の間。頸にかけて祕藏せられけ
J17_0212A05: るを。年來師檀の契淺からざりける。川合の法眼に
J17_0212A06: かたり聞えけるを。懇切に望申ければ。授られてよ
J17_0212A07: り以來。世間に披露して。上人の一枚消息と云へる
J17_0212A08: もの也。
J17_0212A09: 上人御往生事
J17_0212A10: 同廿三日紫雲また來現す。廿四日午の尅紫雲また大
J17_0212A11: にたなびく。西山の炭燒十餘人是を以て來てかた
J17_0212A12: る。また廣隆寺より下向の尼。路次にて是を見て來
J17_0212A13: て告ぐ。上人は高聲不退の上。殊に廿四日の酉の尅
J17_0212A14: より。廿五日の巳の時に至るまでは。高聲念佛體を
J17_0212A15: せめて無間なり。門弟等五六人づづ番づづ番に助音す
J17_0212A16: るに。助音の人人は自聲をほのかにすといへど
J17_0212A17: も。衰邁病惱の上人の音聲は。虚空法界にもひびく
J17_0212B18: らんと聞ゆ。誠に熾盛の御ありさま。見る人なみだ
J17_0212B19: をながさぬはなし。廿五日の午の尅に至ては。念佛
J17_0212B20: のこゑかすかにして。高聲は時時相まじはる。既に
J17_0212B21: 最後に臨ければ。年來所持の慈覺大師の九條の袈裟
J17_0212B22: を著し。頭北面西にふし給ふ。門弟等申て云。只今
J17_0212B23: まて端坐念佛し給へるに。命終の時に至りて臥給ふ
J17_0212B24: こといかが。上人微咲して曰く。我今此故を述んと
J17_0212B25: 思ふ。汝等よく問へり。われ身を娑婆に宿す事は。
J17_0212B26: 淨土の徑路をひらかんがため。今神を極樂にかへす
J17_0212B27: 事は。往生の軌心をしめさんがためなり。我もし端
J17_0212B28: 坐せば人定て是を學ばんか。もし然ば病の身起居輒
J17_0212B29: からじ。おそらくは正念を失ひてん。此義をもての
J17_0212B30: ゆへに。我今平臥せり。端坐叶はざるにあらず。本
J17_0212B31: 師釋尊すでに頭北面西にして滅を唱へ給ふ。是また
J17_0212B32: 衆生のため也。我いかでか釋尊にまさるべきと。頭
J17_0212B33: 北面西にして。光明遍照十方世界。念佛衆生攝取不
J17_0212B34: 捨と唱へ。念佛數返の後。眠がごとくして息絶給ひ

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