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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0104A01: 夜半の夢に。月輪をいだくと見る。つまの夢にかみ
J17_0104A02: そりをのむと見る。各夢さめて後。たがひにかた
J17_0104A03: り。たがひに合す。月輪と見るは。明了の智者をま
J17_0104A04: うくべき相なり。剃刀と見るは。天下の戒師を生ず
J17_0104A05: べき相なりと。則懷胎す。それより後。母ひとへに
J17_0104A06: 佛法に歸して酒肉五辛をたつ。其身やすく其心柔和
J17_0104A07: にして。誕生の時すこしの苦惱なく。不覺にして男
J17_0104A08: 子を平産す。此時紫雲。天に覆ひ。しろき幡。二流
J17_0104A09: 下て。庭上の椋木にかかる。やうらく露をたれ。金
J17_0104A10: 銀光を映す。是を名付て兩幡の椋木と云。見聞のも
J17_0104A11: の掌をあはせ。聞者耳をおどろかす。希奇の瑞相。
J17_0104A12: 權化の再誕なりとぞ申あへる。この椋木をふたはた
J17_0104A13: の木となつけて。いまにところのあかめとす。
J17_0104A14: 此間に繪あり平産の體をかけり。
J17_0104A15: 時國夜討にあひ小矢兒敵を討給ふ事
J17_0104A16: 此段詞かけて禮紙のみあり。又繪あり。夜討の體也。
J17_0104B17: 菩提寺にいたりて勸覺得業に師とし仕る事
J17_0104B18: 此間詞かけて禮紙のみあり。 繪あり
J17_0104B19: 童子上洛事
J17_0104B20: 觀覺案じて曰。この兒尋常の輩にあらず。惜哉。
J17_0104B21: いたづらに邊國にとどめむこととて。久安三年丁卯。生
J17_0104B22: 年十五の春。延曆寺へのぼせけるに。この兒母にい
J17_0104B23: とまをこひて云。母獨身におはします。我一子也。
J17_0104B24: 朝夕に給仕して。父のかたみとも見え奉るべけれど
J17_0104B25: も。さしても。たが御ためも。後世のつとにもなら
J17_0104B26: ず。いまは登山して佛法を修學し。二親をみちびき
J17_0104B27: 奉らんとおもふ。いまのわかれをなげき思ひ給ふ事
J17_0104B28: なかれ。流轉三界中。恩愛不能斷。棄恩入無爲。眞
J17_0104B29: 實報恩者とうけ給はれば。けふより後。戀し。悲し
J17_0104B30: み。恨みおぼしめすべからず。つたへきく。大江定
J17_0104B31: 基は出家して唐へわたりし時。老母にゆるされを蒙
J17_0104B32: りてこそ。彼國にして圓通大師の諡號を蒙りけれ。
J17_0104B33: ゆめゆめ悲 みおぼしめすべからずと。かきくどき

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