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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0105A01: ねんごろにいひければ。はは此ことはりにおれて。
J17_0105A02: みどりなるかみをかきなでで。涙をぞ頭にそそぎけ
J17_0105A03: る。おもひあはせらるる事あり。祕密灌頂とかやに
J17_0105A04: ぞ。物をばいわずして。いただきに五瓶の智水をそ
J17_0105A05: そぐとは申事あんなれ。母おもひのあまりに
J17_0105A06: かたみとてはかなきをやのととめてし
J17_0105A07: このわかれさへまたいかにせん
J17_0105A08: 童兒入洛事
J17_0105A09: この兒。入洛の時。久安三年二月十三日。つくりみ
J17_0105A10: ちにて。時の關白法性寺殿の御出にまいりあひ奉
J17_0105A11: て。傍なる小河にうちより給けるを。御車よりあの
J17_0105A12: 幼きもの。馬にのせながら。具してまいれと。仰く
J17_0105A13: だされけるにつきて。御隨身とも具參す。御車をか
J17_0105A14: けはづし御合掌ありて。いかなる兒ぞと。御たづね
J17_0105A15: ありければ。美作國より比叡山に學問の爲にまかり
J17_0105A16: のぼると申。殿下の仰にさる事あるらん。かまへて
J17_0105A17: 學問よくせらるべし。師匠にたのみたてまつるべし
J17_0105B18: と。念頃に御契ありけり。上下の御ともの人。これ
J17_0105B19: ほどの田舍兒に。過分の御禮儀何事ぞやと思あひけ
J17_0105B20: るに。後に仰のありけるは。彼兒はただ人にあらず。
J17_0105B21: 頂のうへにうつくしき。天蓋ありき。ちかくて見し
J17_0105B22: には。眼精に金光ありつと。これをうけ給はる人人。
J17_0105B23: いかでか感じ申ざらん。御覽じとどめらるる御め
J17_0105B24: と申。見へたてまつる人と申。あらかたじけな
J17_0105B25: やあらかたじけなやとぞ申あへる。

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