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J2360 十六門記 聖覚 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0002A01: 十一殿下敎命造書門 十二頭光現顯本地門
J17_0002A02: 十三流罪歸洛利益門 十四臨終念佛往生門
J17_0002A03: 十五沒後順縁利益門 十六沒後逆縁利益門
J17_0002A04: 第一 託胎前後因縁門
J17_0002A05: 釋迦大師入滅の後。二千八十二歳の星霜を過て。大
J17_0002A06: 日本國。人王七十五代の帝。崇德院の御宇に。上人
J17_0002A07: 出世し給。美作の國。久米の南條。稻岡庄の人なり。
J17_0002A08: 父は粂の押領使漆間時國。母は秦氏の女なり。夫婦
J17_0002A09: 年來孝子なきことを歎て。佛に願。神に祈に祈請其
J17_0002A10: 功積り。願望已に滿足して。長承元年壬子七月上旬。
J17_0002A11: 妻の夢に剃刀を飮と見て有身玉ふ。夢の事を時國に
J17_0002A12: 語。時國。善哉善哉仁者は男子を生べし。但剃刀を
J17_0002A13: 飮と夢見ことは。此子成長して出家學道し。佛法の
J17_0002A14: 棟梁となり。諸衆生を敎化し。遁世出家せしめて。
J17_0002A15: 佛道に引入べき。瑞相なりとぞ申されける。
J17_0002A16: 第二 出胎已後利益門
J17_0002A17: 長承二年癸丑四月七日の午の正中に上人誕生し給へ
J17_0002B18: り。而に四五歳の後は。坐するにかならず西に向。
J17_0002B19: 言初口遊にも。南無阿彌陀佛と唱給ふ。親疎見者。
J17_0002B20: これを怪まずといふことなし。保延七年辛酉の春の比。
J17_0002B21: 時國夜討の爲に殺さる。其敵は伯耆權守。源長明が
J17_0002B22: 息男明石の源内武者所定明なり。造意の由來は。定
J17_0002B23: 明稻岡の庄を知行して。多の年月を送に。時國下掌
J17_0002B24: の身として。定明を輕ずるに依て。遂に對面せざり
J17_0002B25: き。其遺恨なりとぞ。其夜九歳の小童。小箭をもち
J17_0002B26: て敵を射に。定明が目の間に立。此疵によりて顯れ
J17_0002B27: んことを思。即逐電してけり。見聞の上下讚悅せず
J17_0002B28: といふことなし。時の人みな小童を呼で小箭兒とぞ
J17_0002B29: 云ける。時國大事の疵を蒙りて今を最後の時。九歳
J17_0002B30: の子に向て遺言すらく。我死去の後。世の風儀に隨
J17_0002B31: て。敵を恨ることなかれ。これ偏に先世の報なり。
J17_0002B32: 若此讎を報んと欲はば。世世生生互に害心を懷て。
J17_0002B33: 在在所所に輪回絶ことなからん。生ずる者は皆死を
J17_0002B34: 悲む。愁憂更に限なし。我此疵を痛。人又何ぞ痛ざ

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